谷本 心 in せろ部屋

はてなダイアリーから引っ越してきました

JavaOne2010まとめ テクニカル編

JavaOne2010が閉幕してから約一週間。
そろそろ落ち着いてきたので、JavaOneまとめを書く。


まずは、技術面で印象的だったことなどから。

Oracleクラウドに向かう。

これまでの否定的な態度から一転して、
ラリーエリソンはクラウドを雄弁に語っていた。


今までは「クラウドと言うが、ただのWebアプリに過ぎない」と言っていた
否定的な態度は、Salesforceに対してぶつけつつ、
Amazon EC2のようなサービスこそがクラウドであり、
Oracleもそこを目指すと語った。


ところで、Oracle Open WorldのKeynoteで発表されたExalogicだけでなく
Coherenceというキーコンポーネントも元々Oracleは持っており
いつでもクラウドを推進できたはず。


ラリーエリソンの態度を一変させたのは、この時代の流れなのか、
Sunという「ハードウェアベンダ」を手に入れたためなのか、
ちょっと私には分からないんだけど。

HotRockitが今後の主流になる。

Oracle's Java Virtual Machine Strategy」というセッションが面白かった。
http://d.hatena.ne.jp/cero-t/20100923/1285343999


HotSpot(旧Sun Java)に、
JRockit(旧BEA Java)の機能をマージした
通称「HotRockit」が、来年中に登場する予定。


いまHotSpotを使っている人たちは、
恐らく何の迷いもなく(あるいは気づくことなく)HotRockitに乗り換えるはずで、
今後、HotRockitがトップシェアになっていくはず。


特にJRockit Mission ControlやJRockit Flight Recorderといった
モニタリングツール、トラブルシューティングツールが
HotSpotでも使えるようになる所が最大の見どころ。


この辺りのツールに目がない人は、
今のうちからJRockitのツールを触っておくと良さそう。

Future Java : Yet Another Javaが求められている?

もう一つ面白かったのが
「The Next Big Java Virtual Machine Language」というセッション。
http://d.hatena.ne.jp/cero-t/20100920/1285149540


スピーカーのサイトでも詳細がまとめられていたので、そちらも紹介。
http://www.jroller.com/scolebourne/entry/the_next_big_jvm_language1


セッションも割と人が集まっており、
やはり「Javaの次」を求めている人達が増えてきていると感じる。


上に書いたセッションでは、「Java8(やJava9)がそうなったら、どうだろう」
という締めくくり方であったが、ちょっと僕はそうは思わない。
(どうもスピーカー自身もそうは思ってないみたいだけど)


Oracle自身がJavaのライバル言語を産み出すメリットはないし、
オープンソース戦略に打って出ることも、ちょっと考えにくい。


Next Big JVM Languageを提供するのは、やっぱりGoogleじゃないかな。
あるいは傑出した個人かも知れないけど。
誰かが動き出さなければ、いつまでも絵に描いた餅のままになってしまう。

JavaSE : やっとJava7が登場する。

いよいよ来年、本当に、今度こそ、Java7が登場しそう。
2011年半ばにJava7がリリースされ、2012年後半にJava8がリリースされる。


モジュラリティやクロージャーはJava8に回ったけど
Invoke DynamicなんかはJava7に入ってくる。


Invoke Dynamicは、特に動的言語の性能や、クラスのHotSwap辺りに影響が大きいので
Java7登場後の、周辺プロダクトのリリースが楽しみになる。


ところで、
ここ数年間のJavaの停滞感を、今後Oracleがどう払拭するかは、とても見もの。


たとえば、JCPとの連携をきちんと復活させ、
コミュニティから意見を広く集め直すとか?


悪い方の予想で言えば、(歩みを遅める理由になった)OpenJDKに対して
全くリソースを割かないようにして、事実上ストップさせるとか。

JavaEE : 次が見えてこない。JavaVE観点からの機能追加があるか?

JavaSEと違って、次の姿が見えてこないのがJavaEE
もっと言えば(いつも言ってるけど)世の中がどれだけJavaEE
期待しているのか、私にはよく分からない。


次が見えてこないJavaEEだけど、
個人的には、JRockit Virtual Edition(VE)の存在が、
JavaEEに影響するんじゃないかと思ってる。


OS不在で動くVEだからこそ、
「OSありの時にはできたけど、VEになってから出来なくなったこと」
なんてことが出てきて、その一部がJavaEEの機能に対するニーズになるとか。


仮にIBMなどのJVMベンダもVEに追従してきたら、
将来的には「JavaEE = JavaVE」ぐらいのイメージで
語られるようになっても、不思議じゃないかな。

JavaME : 奇策で逆転満塁ホームランを狙う以外ない。

将来が見えないどころか、なくなってしまうんじゃないかと思うのが、JavaME。
iPhone / Androidに対して、Oracle / Javaがどう打って出るのか
という話が聞けることを期待していたんだけど、全く何も出てこなかった。
HTML5周りの話が多少出てたけど、期待できるもんじゃない。


このままでは、iPhoneAndroidには引き離されるばかりなので
(台数だけで言えば、まだJavaMEの方が相当上回ってるだろうけど)
追いついていくためには、何か奇策が必要。


たとえば、今から規格を統一し直して、
Java搭載ケータイで共通的に使えるアプリストアを構築するとか、
いっそAppleGoogleに売ってしまうだとか。まぁあり得ないよね。


ただ、なんか大掛かりの手を打たない限りは、
ただガラケーでの既得権益を得るだけの
つまらないビジネスになってしまうんじゃないかな。

JavaOne2010まとめ カンファレンス編

続いて、カンファレンス自体に対する印象。

お金は掛かっていたけれど・・・

まず、Oracleが主催するようになって、JavaOneは確実に豪華になっていた。
巨大なテント張りの(グリーンハウス的な)ラウンジができたし、
野外ライブもBlack Eyed Peasが呼ばれていたし、
身近な所では、エスプレッソやココアがいつでも飲み放題だった。


まぁランチは相変わらずhorribleだし、
Google IOみたいにスマートフォンが配られる、なんてことはなかったけど。


ただその反面、ホスピタリティや、全体的な段取りはちょっと不足していたと思う。
やっぱり複数のホテルを移動するのは、それだけで大変だし、
セッションルームがコロコロ変わるから、自分が見たいセッションが、
どこで開催されるかよく分からない。


また初日のOracle Open WorldのKeynoteでは、
JavaOne参加者は割とひどい扱いで追い返されてしまい
(JavaOne参加者は入れない、なんて情報はなかったのに)
そこでやる気を失ってしまった参加者もいたみたいだ。


Oracle Open Worldと併催することで、これだけJavaOneに悪い影響が出ている以上、
Open Worldとは別のイベントとして開催して欲しい、というのが率直な感想だった。

Google不在の影響は大きい。

Androidへの訴訟問題の影響で、今回はGoogle社員はJavaOneに参加しなかった。


それで大きく影響を受けたのが、テクニカルセッション。
Puzzlersはなくなり、GWTGuice、Sitebricksなどの近況も聞けなかった。
OpenJDK at Googleなんて超興味深いセッションもキャンセルになった。


ジョシュアブロックの雄弁なセッションを聞けなかったり、
サインをもらうことが出来なかったことに、ガッカリした参加者もいた。


Java7やJava8に対する提案も、かなりGoogle社員が行っていたはずだし、
GWT、GAE/J、Android、あるいはCollection Libraryなどで
良い意味でJavaを引っ張り回しているGoogleが不在では
Javaが良い方向に進むことは考えられない。


やっぱりGoogleJavaに絡まないと、Javaもつまらなくなる。

コミュニティ色が極端に低下した。

参加しなかったのは、何もGoogleだけじゃない。
オープンソースプロダクトや動的言語コミュニティの人達も軒並み参加していなかった。


彼らがどういう理由で参加しなかったかは知らないけれど、
ただ、「JavaOne = コミュニティのお祭り」という式が、
ちょっと崩壊し始めたということを感ぜざるを得なかった。


ちなみに、Dukeとの写真撮影コーナーとかもなし。
二度ほど、Dukeを見かける機会はあったけど。

JavaOne 2010まとめ 最後に

寂しさだけで終わったJavaOne2009とは異なり、
JavaOne2010では、JavaやJavaOneの今後のスケジュールも出てきた。
BRICsでの開催は決まっているし、ひょっとするといつかは日本にも来るかも知れない。


確かに今回はOpen Worldとの併催で、あまり良くないこともあったけど
それは、そう感じた自分たちが、きちんと要望をOracleに出して行けば良い。
とにもかくにも「次がある」ことが決まっている分、前向きになれる。


何だかんだ言って、やっぱり来年も参加しようと思ってる自分がいるわけだし。
(HISを使えば、ホテルと飛行機で10万円ぐらいに抑えられるし!)


さて、最後のまとめとして、
今後、動向を注目していきたいポイントは2つ。


ひとつは「Oracleがどうコミュニティと絡んでいくか」ということ。


最近、ゴスリンが退社した本当の理由、なんて記事もあったけど。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1009/27/news020.html
その最後に「特定のベンダーに収まらないこと」と書かれているけど、
今後、「OracleJava」になってしまわないかどうかは、要注目だ。



もうひとつは「次にGoogleがどう動くか」ということ。


Javaを避けるのか、自分たちのJavaを産み出すのか、
あるいはOracleときちんと連携していくのか。
やっぱりGoogleのいないJavaは考えられず、その動向からは目が離せない。


さて、
最後になりましたが、
今回、JavaOneのチケットを手配してくださった
Oracleの皆様、本当にありがとうございました m(_ _)m